Compound Startup についての考察

コンパウンドスタートアップというLayerXの挑戦 の記事などで年末から年始にかけて Compound Startup が話題にあがっていた。
ただしいくつかの記事や Twitter での反応などを見て、「複数のプロダクトを同時多発的に作る」という部分にフォーカスがいっていてなんとなく腑に落ちなかったのでおそらく出典でもある Parker Conrad (Rippling CEO) built an $11 BILLION customer-obsessed businessThe One Thing Everyone Knows About Building a Startup is Wrong with Parker Conrad (Rippling) を改めて見て自分のメモ用に残しておこうと思っている。

結論から言うと、重要なのは「複数のプロダクトを同時多発的に作る」ではなく 「自分たちしか保有していないデータを活用して多角的に事業を展開することでアプローチする市場の拡大と成功確率を上げる」を最初から設計してやっていく という部分が Compound Startup の戦い方なのだと理解している。

そもそもこういった戦い方が出てきた背景としては、1つのプロダクトで数兆円規模まで成長するスタートアップを作るのが難しくなってきたというのがあるのだと考えている。
よっぽど市場をうまく選ぶ (もちろんほとんどは刈り取られている) か今までにない全くの新しい価値を出せる (もちろん成功確率は低い) などのブレークスルーがないと到達することが難しくなってきているのは米国事情などを見ても明らかだと思う。
そうした中で複数のプロダクトを同時多発的に作っていきアプローチできる市場を広げながら、試行回数を増やすことで成功確率を上げるというのは、自然なアプローチに思う。

少し話は脱線するが、例えば小売系の市場にアプローチしているスタートアップがこぞって金貸サービスを始めているのはここ数年で特徴的なトレンドだったと思っている。

これらは共通して銀行などが持っていない販売データというものをベースにして自分たちのサービスでしか実現できない与信を利用して少額融資を行うというものであった。
他にも例えば、 株式会社メルペイ、クレジットカード事業参入に関するお知らせ で話題だったメルカリというサービスの利用実績に基づく与信を活用するような個人に対して金融事業を提供する例も見られた。

自分はこういったサービスの中でしか得られない、判断できない情報を元にして別のプロダクトを展開するアプローチを最初から設計していくというのが Compound Startup の戦い方の本質だと理解している。

そういった前提の上で Parker Conrad (Rippling CEO) built an $11 BILLION customer-obsessed businessThe One Thing Everyone Knows About Building a Startup is Wrong with Parker Conrad (Rippling) では、1つのプロダクトにフォーカスする戦い方に対して コンパウンドスタートアップというLayerXの挑戦 で説明されているようなアンバンドルからリバンドルの流れが来ているだったり、複数プロダクトの深いシームレスな連携というのが優劣をつけることができていると話している。(そのあたりの説明は LayerX の記事が詳細で丁寧なのでそちらの記事に譲ってしまう)

ちなみにアンバンドルとリバンドルのニュアンスの違いがわかりづらいと思うので自分の理解を補足しておくと

The One Thing Everyone Knows About Building a Startup is Wrong with Parker Conrad (Rippling) の中で1つのプロダクトにフォーカスするアプローチの悪い点として以下のように述べていて

The deepest business problems span multiple point-solution business systems

現代では、Vertical なアプローチポイントがより多くあるのでその機会というのをもっと捉えていく必要があると主張している。

また、

I said “Compound” startup, not “Crappy” startup

Builiding multiple things badly doesn’t work - but compound startups have some inherent advantages

  • integration -> better products overall
  • Re-use component functionallity to buuld better and faster

とも言っていて、ただ単純に「複数のプロダクトを同時多発的に作る」ではないことが伺える。

まとめ

改めて、重要なのは「複数のプロダクトを同時多発的に作る」ではなく 「自分たちしか保有していないデータを活用して多角的に事業を展開することでアプローチする市場の拡大と成功確率を上げる」を最初から設計してやっていく という部分が Compound Startup の戦い方の肝であると考えている。

今後のトレンドとしては、しばらくは今まで詳細に可視化することができなかった (大規模 or ニッチ) 情報を主軸に様々な角度で機能とは独立しているものの、プロダクトとしては繋がっていて、新しいプロダクトを作るたびに俺TUEEE系になっていくような戦い方をする Compound Startup をちらほら見ることができるのかもしれない。